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黄色いぞう 西加奈子 [著]

20080314083730.jpg小説の新しいスタイルが、展開されています。読後感は、まだ書いていませんが、最近読んだ有川浩氏の「阪急電車」もそうですが、いろいろなスタイルの書き方が試されてる小説です。

本書は、黄色いぞうの童話、主人公のムコさんと、ツマの日記の対比、通常の物語の展開の三つのパートが、織りなしながら小説を成しています。主人公は、カタカナです。カタカナの魅力が、漢字を凌駕しています。

日本語を母国語とすることは、英語圏の情報を直接理解できず、情報に制限があり、狭窄な世界に生きていかなければなりませんが、その一方で、ひらがな、カタカナ、漢字を自在に使い分けて、表意文字、表音文字、文字のニュアンスの微妙な機微を理解できることは、小説を読むうえで、とても幸せに感じます。繊細な世界が本の中にあります。

心臓に疾患を持ち、動物の言葉が理解できる鋭敏な感覚を持つツマ。過去の恋愛の傷を引きずっている売れない小説家のムコさん。二人を取り巻く、個性的な、善良な田舎の人々。そのような中で、物語が進んでゆきます。

悪人が一人の登場しません。個性のせめぎ合いです。夫婦とは、いつまでも他人の部分があり、そのことを理解しながら、愛情を深めてゆくんではないかと、この小説を読んで思いました。一生理解できない、だから危うくて、飽きないのではないのでしょうか。

不登校の大地君が、学校に戻る決心をします。売れない漫才師の漫才を聞いたことがきっかけになります。大地君は、感受性が豊かです。それ故に、取るに足りないことが、恥ずかしことに思えて、学校に行けなくなりました。そこで、ツマさんたちが暮らしている、海辺の田舎の祖母の家に居候しています。ある日、老人ホームの演芸会で、かっこ悪い売れない漫才師が、挫折にめげず、一生懸命に人を笑わそうとしている姿に、感動を覚えます。その姿は、ちっとも恥ずかしいことではない、かっこいいことであると感じました。「
大人になると、恥ずかしいことがたくさん起こる、て。今まではそれが嫌だったけど、僕ね、それを受け入れていこうと思うんだ。恥ずかしいことって、かっこ悪いこととは全然違うんだね」大地君は東京の学校に戻る決心をしました。

めくるめく言葉遊びが展開されている小説でした。読後感がうまくまとまりません。たぶん私が苦手な、純文学の範疇だからだと思います。しかし、読みだすと止まりませんでした。

私の好みは、ファンタジー小説です。もっと、範疇を広げなければと思います。その一方で、好きなことに集中することも良しと考えています。